昔のテレビ番組 イレブンピーエム 深夜の扉を開いた革命児──「11PM」が刻んだテレビ史の金字塔
深夜の扉を開いた革命児──「11PM」が刻んだテレビ史の金字塔
昭和という時代を語るとき、忘れてはならないのが“テレビ”の存在です。高度経済成長とともに家庭に普及し、家族団らんの中心となったテレビは、娯楽であり、情報源であり、時には人生の教科書でもありました。
そんな中、1965年にひっそりと始まった深夜番組がありました。それが「11PM(イレブンピーエム)」です。午後11時という当時としては“非常識”な時間帯に、知性と色気、時に過激さをもって視聴者を魅了したこの番組は、まさに“深夜テレビの原点”であり、“大人のためのテレビ”という新たなジャンルを切り拓いた存在でした。
今回は、そんな「11PM」の魅力を、当時の空気感とともに深く掘り下げてご紹介します。
■ 革命の始まり──“夜11時”という挑戦
1965年3月、TBSの「夜のヒットスタジオ」やNHKの「ニュースセンター9時」がゴールデンタイムを席巻していた時代に、日本テレビが打ち出したのが「11PM」でした。放送時間は午後11時から。今でこそ当たり前の深夜番組ですが、当時は“テレビは夜10時で終わるもの”という常識がありました。
この番組の企画に関わったのが、放送作家の小林信彦氏や、のちに「トゥナイト」などを手がけるスタッフたち。彼らは「大人が本音で語れる場をテレビに作ろう」と考え、報道・バラエティ・カルチャー・性といったテーマを縦横無尽に扱う、前代未聞の番組を生み出したのです。
■ 巨泉・欽也・義一──語りの名人たち
「11PM」の顔といえば、やはり司会者たちの存在が欠かせません。
大橋巨泉さんは、知的でありながらもユーモアを忘れない語り口で、番組の“品格”を保ちつつ、視聴者の心をつかみました。彼の「いや〜、それにしても…」という口癖は、今も耳に残っている方が多いのではないでしょうか。
愛川欽也さんは、庶民感覚を大切にした軽妙なトークで人気を博し、藤本義一さんは文学的な視点から社会を切り取る語りで、番組に深みを与えました。山城新伍さんや三波伸介さんといった芸人出身の司会者も加わり、週ごとに異なるカラーを楽しめるのも「11PM」の醍醐味でした。
■ 名物コーナーと“ちょっとエッチ”な夜
「11PM」といえば、やはり“ちょっとエッチ”な内容が印象に残っている方も多いでしょう。水着姿の女性が登場するコーナーや、性に関する討論、時にはヌード写真集の紹介など、当時としてはかなり挑戦的な内容が放送されていました。
しかし、それが決して下品にならなかったのは、番組全体に流れる“知的な空気”と“遊び心”があったから。性を単なる刺激としてではなく、文化や社会の一部として扱う姿勢が、視聴者の信頼を得ていたのです。
また、スポーツコーナーではプロ野球やボクシングの裏話、芸能コーナーでは舞台裏のエピソードや映画評論など、幅広いジャンルを扱いながらも、どこか“夜の教養番組”のような趣がありました。
■ 視聴者参加型の先駆け
「11PM」は、視聴者との距離が近い番組でもありました。はがきによる投稿コーナーや、街頭インタビュー、視聴者参加型の討論企画など、双方向性を意識した構成は、当時としては画期的でした。
特に印象的だったのが、視聴者から寄せられる“赤裸々な悩み相談”。性の悩みや夫婦関係、仕事のストレスなど、昼間の番組では決して扱えないテーマに、司会者や専門家が真剣に、時にユーモラスに答える姿は、多くの視聴者にとって“心の拠り所”でもあったのです。
■ 社会に与えた影響と、テレビ文化の転換点
「11PM」は、単なる娯楽番組にとどまらず、社会に大きな影響を与えました。性の話題をタブー視せずに扱ったことで、性教育や性意識の変化に一石を投じ、また、政治や経済を“語り口”で伝えるスタイルは、のちの報道バラエティの原型となりました。
さらに、深夜という時間帯に“テレビを見る習慣”を根づかせた功績は計り知れません。今では当たり前となった深夜ドラマやバラエティ、情報番組の礎を築いたのは、間違いなく「11PM」だったのです。
■ 静かなる終幕、そして伝説へ
1990年3月、「11PM」は25年の歴史に幕を下ろしました。最終回では、歴代司会者たちが集まり、番組の歩みを振り返る特別編が放送され、多くの視聴者がその終焉を惜しみました。
しかし、「11PM」が残したものは、単なる思い出ではありません。あの番組が教えてくれたのは、「テレビはもっと自由でいい」「大人が本音で語れる場があっていい」ということ。そして、笑いと知性とちょっとの色気があれば、夜はもっと豊かになるということでした。
■ あの夜の記憶とともに
今、テレビの前に座る時間が減ったという方も多いかもしれません。でも、ふと夜更けに目が覚めたとき、あの「11PM」のテーマ曲が頭の中に流れてくることはありませんか?
あの頃、テレビの前で感じたワクワク、ちょっと背伸びした気分、そして司会者たちの語りに耳を傾けた静かな夜──それは、昭和という時代の、かけがえのない一ページでした。
「11PM」は終わりました。でも、あの番組が教えてくれた“大人の時間”は、今も私たちの中に生き続けています。






















